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2014年03月01日

【AQUA263号】BMWアジアから

フィリピンのBMW技術の動向

 現在、ネグロス島のカネシゲファーム、北部ルソンの農事組合法人CORDEV(コルデヴ〜バナナと稲作農家中心の団体)、同じく北部ルソン山間部のギルバート農園(柑橘農家)の三ヶ所が、フィリピンにおけるBMW技術の拠点となっています。今年中に、この三者を中心としたBMフィリピン(フィリピンBM技術協会)の設立に向けて、ここにきて話が急展開してきています。設立に関しては約四年前から構想がありました。カネシゲファームの代表であるアルフレッド氏は白州郷牧場や米沢郷牧場など、日本のBMW技術の拠点を訪問するなど、BMW技術の理解も深く、北部ルソンのプラント工事は㈱匠集団そらと共同でおこなうなどしてきました。
 カネシゲファームが復興してから数年で、彼らは自分達に適した形でBMW技術を軸にした養豚と耕作の有畜複合の資源循環型農業と暮らしを作り上げてきました。そしてこの取り組みをモデルにした地域が四つになり、それぞれに少しずつ動き始めているのです。
 各地域では母豚数頭の養豚をはじめ、豚舎の排水(糞尿込みの豚舎の洗浄水)をメタン発酵させたバイオガスを煮炊きに使用し、消化液(スラッジ)は液肥として畑や田んぼに利用というカネシゲファームと同じ仕組みを小さくして実践。生物活性水はカネシゲファームから運んで利用していますが、いずれは生物活性水プラントを設置できるようにという願いもあります。バイスという山間部の地域では、規模は小さいながらも養豚、野菜・米の栽培技術が少しずつ向上し、子豚を地域内やその周辺で販売することで、収入が増加しているという結果を出し始めているとのことでした。
 また、この四つの地域の共通点はバランゴンバナナ(※)の生産者であること、生産者同士のつながりや生産技術などの情報共有など、ネットワーク作りという面でもBM的な要素が生かされています。カネシゲファームやCORDEVには最近急激にBMW技術に関する問い合わせや視察が増えています。フィリピン全体としてオーガニックに関する関心が高まっている機運もあり、ネグロスでは自治体からの問い合わせもあるなど、BMW技術への関心が高まってきています。このような現状を踏まえてフィリピンにBMW技術協会(連帯)のような組織を設立し、フィリピンに適合した技術普及と農家の連帯を形成していくことで、更に農民たちの自立を後押しできるのではないかと思います。
 今回のBMフィリピン設立に関しては、これもひとつのステップだと思います。これからどのような形で組織を作り、運営して行くのか、その上でBMW技術をどう普及していくのか焦らず考え、行動していきます。仲間がいて連帯があり、支えあう関係がある限り、「未来へのチャレンジ」は諦めることなく続きます。
    
※バランゴンバナナはフィリピンの農民たちの自立を応援する「民衆交易」の商品として、一九八九年から日本の生協を中心に販売されている。協会法人会員でもある、NPO法人APLAと㈱オルタート・レード・ジャパンはフェアトレードの先駆けとして一九八九年からこの事業を展開しています。
(報告:BMW技術協会 事務局 秋山澄兄)

インドネシアATINA社の排水処理施設を訪問

 一二月一二〜一五日に、インドネシア東ジャワ、シドアルジョにあるATINA社(PT.ALTER TRADE INDONESIA)の工場を訪問しました。
 この工場では、主に日本の生協向けにエコシュリンプ(粗放型のエビ養殖)の冷凍加工を行っています。工場からの排水はエビの入荷量にもよりますが、一日あたり約五〇tです。
 加工時の排水以外に、従業員の制服の洗濯排水や食堂の雑排水も少しですが流入しています。
トイレの排水は別系統で配管されており、排水処理施設には入ってきません。
 プラントは、原水ポンプ槽、流量調整槽、第一曝気槽、沈澱槽、第二曝気槽、自然石槽が設けられており浄化されていきます。自然石槽からは、プラントの隣にあるインディカトル(池)に流れ込み、オーバーフローして敷地外の河川に放流されています。
 雨季のスコールが激しい時は、河川からインディカトルへの逆流も起こるそうです。プラントやインディカトルの周りは緑化されて遊歩道も整備されています。
一三日の午前に訪問した時は、エコシュリンプの入荷は午後からとのことで、工場からの排水は少量でした。流量調整槽、第一曝気槽、第二曝気槽とも臭気もなく順調に稼働していました。また、自然石槽から処理水の一部を生物活性水の製造に利用しています。

 一四日には、エコシュリンプの養殖池を見学しました。工場から車で四〇分くらいの大きな川沿いを河口に向かって走ると養殖池が見えてきました。見学した養殖池は、ATINA社の生産者の中でも二番目の養殖池面積を持っているマイナムさんの所有する池を見せていただきました。細長い池の端っこに池の水を排水する小さな水門があり、そこに竹でできた網かごを設置してエビの収穫作業を見学しました。あいにく収穫は少なかったですが、ブラックタイガーや小魚やカニが入っていました。
 養殖池には管理人夫妻が池のそばに住み込んでいて、日々の池の管理を行っています。ガンガンという水草にプランクトンや水棲昆虫などが棲みつきそれをエサにエビが育つそうです。
 養殖池からの帰途、二〇〇六年の五月にガス井の掘削中に突然熱泥が吹き出し、住民や工場が追い出された現場も見学しました。周囲を高い堤防に囲まれた中は石油臭い泥が充満し、一面泥の海と化していました。
(報告:㈱匠集団そら 星加浩二)

Author 事務局 : 2014年03月01日 12:20

 
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