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2011年02月01日

【AQUA228号】カネシゲファーム・ルーラルキャンパス視察ツアー報告

 二〇一〇年一二月二日〜六日の四泊五日、フィリピン・ネグロス島のカネシゲファーム・ルーラルキャンパス(以下、KFRCと略)の視察ツアーが、BM技術協会主催、NPO法人APLAの協力で催行されました。参加者は伊藤幸蔵BM技術協会副理事長をはじめに、常任理事の向山茂徳氏、清水澄氏、椎名盛男氏。協会会員からは、黒富士農場・農場長 水上勝利氏、株式会社ジーピーエス 小川年樹氏、㈲炎屋代表 宇野俊輔氏、山梨自然塾のメンバーで、山梨大学教授の御園生拓氏。現地案内と通訳としてNPO法人APLA事務局長の吉澤真満子氏。協会事務局より井上、秋山の以上一一名です。

初日〜
 一二月の寒い日本を脱出すること約半日、常夏の島へ到着したのは、あたりが暗くなるころでした。現地ではKFRCコーディネーターのアルフレッド・ボディオス氏とAPLA・ネグロス駐在員の大橋成子氏が笑顔で私達を迎えてくれました。このお二人には、今回のツアーのコーディネートと案内・通訳と大変お世話になりました。初日は移動や気温差等の疲れもあり、翌日からのスケジュールの説明を受け、早い就寝となりました。

二日目
 朝食前からホテルの外へ出て、トライシクル(自転車タクシー)に挑戦し、活気溢れる町並の朝を満喫される方がいるなど、皆さん元気いっぱいの朝を迎えました。
 朝食後にKFRCへと移動しました。途中のラ・カルロータと言う町の市場に立ち寄りました。大きな市場ではありませんが、野菜や肉、魚、米などが並び、皆さん熱心に見学していました。
 あらためてKFRCに関しての説明がありました。KFRC復興から現在までに関しては、一一月の全国交流会でのアルフレッド氏の発表が記憶に新しいですが、前々号のAQUAなどの記事をご参照下さい。アルフレッド氏からの説明が終わると見学が始まりました。セミナーハウスを中心に豚舎、田んぼ、野菜の圃場、そして今回の一番の見どころである、生物活性水とバイオガスの連結プラントとランポンプ。豚舎排水でバイオガスを抽出、消化液(抽出後の廃液)はその後の処理等の問題が多く残るのですが、ここでは生物活性水施設がそれをカバーしています。消化液がそのまま第一槽目のタンクに原料として流れ込み、そのまま生物活性水になります。また、消化液はそのまま液肥として畑でも利用します。
 豚舎の清掃は生物活性水をそのまま利用していますので、無駄なく循環の系ができあがっているのです。ランポンプの見学では、高低差一メートルの水圧で数十メートルの高さ(セミナーハウスの飲水タンク)まで水を送っていました。一通りの見学が終わると、元グリーンコープの兼重専務のお墓に集まり、各自が線香をあげました。
 セミナーハウスに戻ると、KFRCの研修生達がこの日のためにと腕を奮って作ったという、一〇〇%KFRCのものでできた食事を頂きました。KFRCでの日々の食事は、自分たちで育てたものでほとんどをまかなっているとのことでした、素晴らしい。参加者の方からは、プラントとランポンプに関しての質問が集中しました。先進国の農業とは遠い世界ですが、地にあった適性中間技術がまさに適応されている様子を見て、感激する方も少なくなかったはずです。見学をしながらですが、農場スタッフのカルロス氏や研修生達から米の苗の植え方や野菜の栽培方法などに関しての質問があり、臨時講習会が開かれました。伊藤幸蔵副理事長と清水澄常任理事が実際に田んぼにて丁寧に説明されていました。椎名常任理事や山梨大学の御園生先生から、豚舎の利用法やバイオガスの利用の仕方で、新しいアイディアやアドバイスなどもいくつか出され、向山常任理事は鶏の餌や状態の見分け方などに関してアドバイスをされていました。ただ視察するだけではなく、プロの農家からの指導やアドバイスなどがKFRCのスタッフにされていたことは、今回のツアーの大きな意味を持っていたのではないかと思います。

三日目
 午前中はKFRCのバイオガスプラントとランポンプを設計・施工したエイド財団のテーマパークを訪れました。代表のオーキー氏(オランダ人)は、適性中間技術を競う「BBCワールドチャレンジ」と言うコンテストで一位になり、その表彰式出席のため不在でした。
 テーマパークでは技術者の方が、水力・風車発電、バイオガスプラント、ランポンプ、籾殻ストーブ、レモングラスオイル抽出機など、様々な適性中間技術の器材に関して丁寧に説明をして頂きました。ここではランポンプの仕組みに関しての質問が集中しました。
日本の特に山間部での農業や水田を営む方達にはうってつけの技術が豊富にありました。
 午後はバコロド市内の市場を見学しました。人口六〇万人と言われるバコロドはいつでも外に人がいっぱい溢れ、活気に満ち溢れていました。昔からの市場も人が溢れんばかり、地場で獲れた野菜、米、肉、魚、ありとあらゆる食材や食品、雑貨や衣類などの生活必需品まで並び、参加者の方々は少し圧倒されていたようでした。その後、ショッピングモールへ向かいました。モール内のスーパーでは多くの生鮮輸入品が並び、市場との違いにびっくりしました。数人の方がスーパーで食材を購入してホテルへ戻りました。
ホテルではパッケージを見比べたり、味見をするなどしました。様々な意見や感想などを交換しあい、即席の勉強会の開催となりました。

四日目
 午前中はかつてアジア最大級と言う名声を残した「ヴィクトリアス製糖工場」を見学。時代とともに規模も縮小されたようでしたが、未だサトウキビを満載に積んだトラックが列をなして並んでいました。その後、シライ市のスペイン人の旧家、マングローブの保護区域等を見学して、全行程を終了しました。参加者の皆さんの感想は様々でした。「適性中間技術を見直し、日本でも最大限利用すべき。」、「ある意味、技術が進み過ぎた日本では今後、KFRCのような教育を含めた形の農業(農学校)が必要になってくることを実感した。」など、様々な感想がだされましたが、とても充実したツアーになったことだけは間違いないようです。
 BM技術協会では今後もこのような視察ツアーを開催して行く予定です。

株式会社匠集団そら 秋山 澄兄

KFRC視察ツアーを終えて


 二〇一〇年一二月五日。五haあるカネシゲファーム・ルーラルキャンパス(KFRC)を、ツアー参加者たちは炎天下のなか、約二時間かけて隅々まで視察した。研修生やスタッフは、農場を案内しつつ、実地のアドバイスに耳を傾けた。ツアー参加者たちの注目は、BMW技術とバイオガス装置を合体させたプラントや自動揚水器(注)に集まった。自動揚水器は、水道が設置されていない発展途上国の農村などに多く設置されている技術だが、日本の農業現場などにも生かせるとのこと。
 KFRCが始動したのは二〇〇九年七月。カネシゲファームは一九九六年の設立後、様々な要因によりうまく機能していなかったが、農民たちから「農業技術を学びたい」という声が改めてあり、地域を引き継ぐ次世代を中心に農業を通じて学んでいく場所「KFRC」として再スタートした。BMW技術も復活し、農場のいたるところで活用されている。
 KFRCのフレッドさんが言った。「これまでネグロスは日本に助けてもらってきた。これからは、自分たちが何を返せるかだと思う。金銭的なところを超えて何を一緒にできるかということだ」。気候変動の影響や更なる格差の波が押し寄せる今、南も北も、持続可能な地域や暮らしづくりが求められる。ネグロスと関わりはじめて二五年、BMW技術を通じてつながってきた日本やアジアの皆さんとネグロスの仲間たちが共に学びあえる関係になり始めたことを確認するツアーとなった。

特定非営利活動法人APLA 吉澤 真満子

(注)自動揚水器(ランポンプ)外からのエネルギーを利用せず、水が段差を流れる圧力を利用して、高台に水を汲み上げる技術。

Author 事務局 : 2011年02月01日 21:23

 
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