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2012年10月01日

【AQUA246号】「くらしと放射能を考えるフォーラム」続報

 六月二三日、千葉BM技術協会は、千葉県船橋市勤労市民センターにて、研修会「くらしと放射能を考えるフォーラム」を開催した。千葉BM技術協会会員及び関係者、生協組合員ら約一三〇人が参加して、“放射能に負けない体づくり”を具体的に学習したこのフォーラムについて詳細をお伝えする。

肥田舜太郎先生 講演会DVD上映
 昨年八月二六日に開催された、BM技術協会「第三回BMW技術基礎セミナー」での特別講演「内部被ばくによる晩発生障害と、フクシマのこれから」の映像が上映された。肥田氏の被ばく体験に基づいて、昨年の原発事故による放射能汚染が福島を中心とした東日本にもたらす影響が語られた。「今後は開き直り、体を丈夫にし、規則正しい生活をして免疫を高めるしかない。食べ物は食べ方が大切。よく噛み、唾液(消化酵素アミラーゼ)を混ぜ、消化吸収を高めること。また、新陳代謝を高め、放射性物質が入ってもすぐに排出できるようにすることも大事。」

内科医 土井里紗先生の講演「放射能に負けない体づくり」要旨
 これまでの「自然界の放射能」に加えて、3・11以後は原発から出た「人工の放射能」とも向かい合わなければならなくなり、放射能に負けない生活スタイルの追求が必要となった。放射能に負けない体づくりには、「解毒力」「抗酸化力」「免疫力」をつけることが重要。なるべく放射性物質を取り込まないことが大前提だが、やむなく体に入った放射性物質をいち早く排泄するために、まず「解毒力」が必要。排泄しきれないで体に残ってしまった場合、「免疫力」と、活性酸素を消去する身体の「抗酸化力」とで細胞を守る。
 この三つの「解抗免力」すべてを高めることが必要だが、その機能を高めるミネラル、食物繊維、酵素、発酵食品などを上手に利用したい。また、解抗免力を高める生活習慣の実践は、放射性物質に限らず、すべての健康に通じる習慣である。

意見交換会での発表
 新生酪農 鈴木猛氏からは3・11原発事故直後の原料乳状況とその検査結果、新生酪農の対応と生活クラブ生協の放射能対策などの発表があった。新生酪農では、自主基準(牛乳一〇ベクレル以下)を設け、毎集乳日ごとのサンプリング、放射能検査を実施し、測定値はすべて組合員に公開している。より影響を受けやすい子供や妊婦をはじめとして、できるだけ放射性物質を避けるために「徹底した検査と情報公開」が重要。
 農業組合法人 和郷園 木内克則氏からは信頼できる第三者機関として日本GAP協会の放射能検査プログラムを採用した和郷園の検査体制についての発表があった。圃場ごとのスクリーニング検査にはじまり、土壌、水源の水、出荷前の農作物を厳密に検査、すべてにおいて安全性が確認された場合に「品目ごと」の合格の認定が受けられるようになっている。四つのステップの検査を経て合格農場が認定され、今後も検査は継続されていく。
 白州郷牧場 見田由布子氏からは「免疫力を高める食生活」の提案があり、白州郷牧場の麹について、また麹の歴史、微生物利用による発酵食品の機能などが紹介された。白州郷牧場では約三〇年にわたり発酵そのものについて研究をし、麹をはじめ、味噌、甘酒、漬物などをつくってきた。発酵の持つ4つの力、①菌の種類と数の莫大さ、②保存力、③滋養の宝庫(免疫をつくる、ビタミンをつくる、腐敗菌の増殖を抑える、消化を助ける)、④独特な匂いと味。この力がアジアモンスーン一帯の人々の暮らしを支えてきたのではないかと考える。また、これらの力が人間の免疫力、新陳代謝力を向上させることにより「放射能に負けない体づくり」につながっていくのではないか。さらに、放射性物質の半減期の時間、発酵の時間、人の脳の時間と、いろいろな時間の関係について何かあるのではないか。今は「良いうんちをし、そしてそれを無駄にしない」ことが大切で、これはBMW技術にとっても同じ。
 また、コーディネーターのNPO支援センターちば 岡田哲郎氏から、農作物の栄養成分や抗酸化力が六〇年前に比べて減少しているデータが示された。

「くらしと放射能を考えるフォーラム」のまとめ
一.放射性物質に関する現状認識
・東日本の多くの人々、そして千葉県(首都圏)に在住する多くの人々も、すでに内部被曝していること
・環境中の放射性物質の完全な徐染は不可能であること
・生態系の物質循環等を通じ、今後も長期にわたって放射性物質は、身近に存在すること
・低線量の内部被曝であっても、人体への悪影響は否定できないこと
――という状況認識に立った上で、以下の人体や生命体への悪影響を最小限にする必要がある。
二.内部被曝による人体や生命体への悪影響
・放射性物質から発生する放射線により、DNAに障害を発生させる直接的な悪影響
・放射性物質から発生する放射線により、体内に活性酸素が発生し、活性酸素によってDNA・細胞が酸化し、障害が発生する間接的な悪影響
――以上の悪影響が発生する可能性があることを認識し、放射性物質が人体に与える悪影響を最小限とするため、その対策として以下の指針が重要である。
三.人体への悪影響を最小限にするための指針
・放射性物質を体内からいち早く排泄すること(解毒力)
・必要以上の活性酸素を除去させる抗酸化力を高めること(抗酸化力)
・障害が発生した細胞や病原体を駆逐する免疫力を高めること(免疫力)
※以下、この三つの総称として「解抗免力」と言う
――これら「解抗免力」を高めるため、日々の食事や生活習慣を見直すことが重要となる。
四.各食品中の「解抗免力」に注目
 特に食生活に関しては、具体的に各食品中に含まれる「解抗免力」を高めるビタミンや酵素、ミネラル等、各食品の特徴に注目し、食生活に留意する必要がある。
五.低下している農産物中のビタミン等、抗酸化力とその原因
 一方で、現在生産されている農産物は、それらの「解抗免力」、とりわけ抗酸化力等は、はたして高いのか、低いのか、疑問であることが提起された。例えば、ホウレンソウでは、一九五一年と二〇〇一年での食品成分分析比較では、ビタミンAの成分量は、二〇〇一年では、一九五一年の一〇分の一となっている。また、農作物中の硝酸態窒素と、ビタミン・糖度・抗酸化力は反比例する関係にあることが挙げられた。
 そして、これら農産物のビタミンやミネラル等の減少の主な直接的原因は、
(a)農産物生産圃場の有機物やミネラル不足等による地力の低下
(b)化学肥料・農薬等に依存した農産物栽培
(c)これまでの栽培技術方針及び栽培技術の未確立
(d)品種改良
――等が挙げられ、間接的原因として、
(e)大量生産・販売(消費)優先思考による、農産物の生産様式
(f)上薬としての食品(農産物)価値の欠落
(g)効率性・利便性・快適性の追求により、省みられなくなった資源循環型の生産・生活様式
(h)山や流域の岩石起源のミネラルが動植物に利用できる形になっていない河川水(杉植林等による森林の単層林化や、森林を水源とする河川水に、生活・工業廃水処理に消毒用の塩素が投入されること等に起因する錯体ミネラルが含まれない状態になっている水)――の農産物栽培への利用等による生態系の物質循環機能の低下、等が挙げられる。

 今後の課題としては、「解抗免力」を高める農産物の生産や、放射性物質を農産物に移行させない生産とそのチェック体制の構築・維持が考えられる。
(報告:BMW技術協会事務局 井上忠彦)

Author 事務局 : 2012年10月01日 21:52

 
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