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2013年08月01日

【AQUA256号】インドネシアにてBMW技術学習会開催

BMW技術が、循環型社会を創造し発展させる道筋に

 今年三月、インドネシアのATINA社にBMW技術・排水処理プラントと生物活性水プラントが導入されてから約三カ月、現地スタッフやエビ生産者向けにBMW技術に対する理解を深めるために、BMW技術基礎と生物活性水活用法の学習会が開催されました。

①エビ養殖の未来と BMW技術
 〜ATINA社統括責任者 津留歴子
 オルター・トレード・ジャパン(ATJ)のインドネシア現地法人オルター・トレード・インドネシア社(PT ATINA)が冷凍エビ・エコシュリンプの製造をおこなっているインドネシア・東ジャワ州のシドアルジョとグレシックは、中部ジャワからゆったり流れる大河ブンガワンソロが海に辿り着くデルタ地帯の特性を生かし、昔から魚の養殖が盛んで、一九七〇年代からはインドネシアの主要輸出品となったブラック・タイガー・エビの産地として知られています。ATINA社はこの地域のエビ養殖生産者と一緒にエコシュリンプ事業に取り組んでいます。二〇一二年にはATINA社員とシドアルジョのエビ生産者の一部でKOIN(Konservasi Indonesia・インドネシア保全)というNGO団体を立ち上げ、自然循環と一体化したエビ養殖を将来にわたって持続的に続けるため地域の環境保護と改善において積極的な役割を果たそうとしています。KOIN設立の背景には、一九九〇年代を境にエビの収穫量が年々減少傾向にあるという状況があり、その原因のひとつにウィルス感染による病気の発生率が高まっていることがあります。ウィルスに負けない強いエビを育てたいという生産者の願いは、おのずと水や土壌の状態、そして周囲の環境へと関心は向っていったのです。
 ATINA社は新工場建設において、エビ加工場から排出される汚水処理のためBMW技術を導入しました。自然が本来持つ浄化作用の仕組みを利用した排水処理方法、そこから生物活性水を作り、水をより良い状態にして自然に返すというシステムが、自然の力を利用した粗放型エビ養殖と理念が一致するのは言うまでもありません。KOINの代表でシドアルジョエビ生産者の若き担い手のイルルさんは、「今年三月のATINA新工場開所式に参加してくださったBMW技術協会の皆さんとの交流を通じて、生物活性水の話に大変興味を持ち、自らが悩んでいる粗放型エビ養殖の問題解決につながるのではないか」と目を輝かせました。
 生物活性水についてもっと知りたいという要望はエビ生産者だけでなく、BMW方式の排水処理プラントを設置したATINA社スタッフからもありました。旧工場の排水処理方法では微生物の培養に苦労し、時に汚水処理がうまくいかず悪臭を放ってしまうこともありました。それがBMW方式では、微生物を含んだ汚泥を循環させることで、原水槽の汚水さえも臭いがなくなりました。BMW排水処理施設は、ATINA社にとって内外に自慢できるものとなり、BMW技術のコンセプトをより深く知り、外部の人に自信をもって伝えていきたい、という気持ちがプラントのオペレーションに携わっているスタッフのなかに芽生えてきたのです。こうしたエビ生産者、ATINAスタッフの熱い要望を受けて、BMW技術協会の秋山事務局長にBMW学習会の開催をお願いしました。学習会の様子については、ATJ社でエコシュリンプ事業を担当している若井が次に報告していますが、学習会の参加者はBMW技術排水処理システムと生物活性水の利用についての知識を深め、エビ養殖や農業、私たちの生活に応用するヒントをいろいろ得ることができました。そして、BMW技術を通してエビ生産者やATINAで働く若い人たちが循環型社会を創造し発展させることが、粗放型エビ養殖を次世代に引き継いでいく道なのではないか、という思いを抱きはじめたことに希望が見えました。

②学習会報告 〜株式会社オルタートレード・ジャパン 若井俊宏

 二〇一三年六月一九日、インドネシア初のBMWプラントを導入している、オルター・トレード・インドネシア社(ATINA社)の新工場において、BMW技術に関する理解を深めるための学習会が行われました。平日にも関わらず、東ジャワ州シドアルジョ・グレシック周辺の養殖エビ池主や契約集荷倉庫のオーナーといった、ATINA社が加工・凍結を担っているエコシュリンプに関わる人々に加え、州や県の水産局・環境局の職員など、総勢四〇名近い大盛況となりました。
まず、ATINA社のBMWプラント担当者(アントック氏)から行われたのが、ATINAプラントの概要についての説明。ATINA新工場が完成したのは今年の三月であり、BMW技術との関わりはまだ浅いのですが、手元資料を使わない流暢な発表からは、理解の深さとBMW技術に対する高い関心を感じることができました。
 次いで、BMW技術協会の秋山事務局長から、土・水・山を中心とした自然の循環モデルと、BMW技術の基礎と概要についての説明が行われました。河川の流域で、河川からの水を引き込んでエビ養殖を営む生産者にとって、水の質は非常に重要な要素。「良い水が良い生き物を育てる」というBMW技術の考え方、そして「環境は上流を含めた自然循環の中で形成される」というモデル図は、より広い目で彼らの生活環境を捉える格好の素材になったと感じました。また、この発表の後、午後に備えて水産局の職員が環境局の仲間を急遽呼び寄せるなど、行政にも示唆を与える機会となったようです。
 その次に行われたBMW生物活性水の活用法に関する発表では、予想通りの大きな反響がありました。韓国の生産者のたわわに実ったトマトの写真は、BMW技術がもたらす幸せな未来を想起させるに足るものだったように思います。しかし、その発表の中で秋山氏が言った一言、「この生産者はトマト栽培に関して基本的な技術があり、生物活性水を利用することによって、より素晴らしいトマトを栽培している」という点こそ、我々が理解すべきポイントであると感じました。BMW技術の仕組みや理念と自分たちの環境の現状とを見据え、どのように役立て、循環させていくことができるのか?大きな課題ですが、今後一緒に取り組んで行きたいと思います。

Author 事務局 : 2013年08月01日 20:34

 
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