【AQUA270号】「TPP」学習会報告

〜オルター・トレード・ジャパン 政策室 小林和夫
 八月五日におこなわれた第四回アジアBMW技術交流会の実行委員会後に、元農林水産大臣で弁護士の山田正彦氏を講師に迎えて「TPP」学習会を開催しました。

○山田正彦氏講演〜概要まとめ
 TPP問題の本質は政府や国という主権、単位を超えて多国籍企業が自由に経済活動ができることを許し、「一%」と呼ばれるような一部の富裕層に富を集中させる一方、一般市民にとっては経済的メリットどころか基本的人権を脅かすことになる。TPPによって自国のほんの一部の産業が発展(国益にかなう)するかもしれない。だから、TPP賛成と論じる識者、市民も多数いる。しかし、山田氏が引き合いに出した北米自由貿易協定(NAFTA)の事例は、「安価なトウモロコシがアメリカから大量に輸入されたためメキシコの多くの小規模農民が倒産し、農民は職を求めてアメリカに安い労働力として流入した。その結果、アメリカ人労働者が次々と失業し、低賃金労働者、それ以下の生活を虐げられている。メキシコに残された農地は、多国籍企業に安く買い取られ、遺伝子組み換えトウモロコシが作付されている。突然、生計の糧を失うメキシコの小規模農民、アメリカ人の労働者が多く存在する。笑っているのは多国籍企業だけ。
 農業以外にも、医療、保険、労働、教育など生活の様々な分野で決して良いとは言えない影響をもたらす。医療・保険分野の国民保険の市場開放、特定医療の問題。最後は、裕福な人間しか健康保険に入ることができず、適切な医療を受けることや、きちんとした医薬品が購入できなくなってしまう。
 さらに、現在の日本では遺伝子組み換え食品の表示がされているが、TPPはその制度を撤廃する。企業に都合の悪いことが隠されるおそれもあり、消費者は安全な食品を選ぶことができなくなってしまう。堤未果著の「貧困大国アメリカ」でも書かれているが、「生存権」は保障されているとは言えない。TPPをめぐる闘い、論点は、もはや私達の生きる権利、国の文化の存続に関わる問題ではないか。多くの日本人に、この観点からあらためてTPPを考えてほしいと思う。自由貿易で豊かになるっていうのは幻想にすぎないと。
 最後に山田氏は、自ら先頭となって運動を起こすと。TPPに対抗するため、TPPは憲法違反であるという切り口からTPP差し止め訴訟を起こす準備をしている。その根拠として「知る権利」と「生存権」の侵害をあげ、TPPの交渉内容について国会議員でさえ誰にも知らされていない。その国会議員がTPPを国会で議決するのは、立法府の最高機関である国会に対しての侵害行為ではないかと。多くの国民に原告になってもらい原告団をつくる予定だ。
 TPPに関しては常々、問題を農業分野だけに矮小化していること、日本に国益があるかどうかの観点でその是非が議論されること、そして何より秘密交渉であることに疑問と憤りを感じていた私にとって、山田正彦氏の講演は学ぶことが多く、共感できる内容でした。一一月の交流会では、韓国の元農林長官・金成勲(キム・ソンフン)氏の基調講演が予定されています。韓国が結んだ韓米FTAの影響、諸問題についての話があるかと思います。明日は我が身、日本もその現状にきちんと重ねあわせて考えていかなければいけない。

Author 事務局 : 2014年10月01日11:49

【AQUA270号】訃報 秋田忠彦さんを悼む

茨城BM自然塾   清水 澄

 元BM技術協会理事長であられた秋田忠彦さんの訃報の知らせを受けた時は、驚きの一心で言葉も出なかった。謹んでご家族を始め親交があった関係者の方々に、お悔みを申し上げます。
 私と秋田さんとの出会いは、茨城県鉾田市大和田の市村一衛さん宅でした。この農民道場の市村館長は終戦直後に農地開放運動を日本で最初に大規模におこなった方であり、毎日全国や世界からも来客があった。政治、経済、芸術、作家や学者先生との交流やマスコミ関係者も多く訪れ、農家の若者と職業がことなる異業種間の勉強の場であった。特に公害問題が話題になっていた頃で、講師に招いた内水護博士の秘書として秋田さんも同行していて、畜産公害の浄化に微生物を利用した技術の講演会を三回くらい開催した。
 講演の中で香川県高松市の三好牧場で実際に微生物を利用して良い成果を挙げていると説明があり,現地へ技術指導に行くとの事で私も同行して視察となった。住宅地にある牧場で成牛が三〇頭ほどいたが、悪臭も無くハエもいないし、しかも屋敷内で醗酵堆肥を生産していた。この様な牛飼いもいるのかと、驚きと感動でその夜は眠れない程のショックを受けた。
 翌日高知県奈波利町の養豚場を見学したが、秋田さんもはじめてのようで、豚舎に入るには消毒をと、今でいう生物活性水を頭から噴霧され長靴に履き替えて急な坂道を上って豚舎に入った。秋田さんが手招きするので行くと、五〇〇〜六〇〇頭の豚がピンク色の綺麗な肌で、鼻グラで寝ている姿は壮観で、動物飼育の原点を見た思いだった。動物飼いは最適な環境とストレス解消、あとは栄養バランスだ。その飼育方法の説明に強烈なカルチャーショックを受けた。
 直ぐに自分の牧場にも、この技術を取り入れる事を内水先生と秋田さんにお願いした。六トンタンク×一基で乳牛の尿と地下水で醗酵液づくりに成功した。しかし微生物であの臭い糞尿がどうして浄化されるのかが解らないので、自分でプラントを再現実験し、発酵液肥が農作物生産に有効に使えること、また家畜の飲水改善に効果があることも分かり、年々成果があがり、視察者にも説明が出来るようになった。
 この技術で汚水や生ごみ発酵処理のやり方をパネルにまとめ、日本土木学会と大阪工大主催の環境パネル展に出展し、日本土木学会の優勝賞で副賞三〇万円を頂いた。その時の秋田さんの「やったー」 と発した笑顔は、いまだに忘れられない。
 また、茨城県霞ケ浦で開催された世界湖沼会議で水田稲作での水質浄化と生き物生息について発表した時も、原稿の作成に秋田さんから技術的アドバイスを受けた。これがマスコミに報道され、特にNHKで放映した時は、視察や問合わせが毎日あって仕事が出来ないと話をした事をきっかけに、BM技術協会が中心になって普及活動を全国に広める為、人脈づくりやプラントの普及を積極的に取り組まれた事が、今日の協会の礎になっていることは間違いない。
 秋田さんは人生で一番の働き盛りに、BMW技術の普及と技術開発に全力で取り組んでいた。この功績を絶やすことなく更なる発展を目指して、一般社団法人BMW技術協会が若手後継者に引き継がれ安泰であることをご報告します。
 秋田さんとの最後の会話は一昨年の春頃だったと思うが、突然、「タケノコは出たかな?」と電話があり車で堀りに行くよと約束をしたが、来られなかった。会っていれば多くの語らいがあったかと思うと残念だった。
 BMW技術の普及活動に専念し、全国各地に人脈とBMW技術の拠点づくりに貢献した功績は多大のものがあったことを感謝し、故人の安らかな旅立ちとご冥福をお祈り申し上げ、お別れの言葉と致します。

Author 事務局 : 2014年10月01日11:47

【AQUA270号】熊本県でBMW技術の学習会が開催

八月二一日、熊本県南阿蘇村でBMW技術の学習会が開催されました。

 主催は「南阿蘇村ブランド米生産実行委員会」で、講師は西日本BMW技術協会事務局長宮﨑利明氏です。
 南阿蘇村には村営の「南阿蘇村有機肥料生産センター」に生物活性水プラントがあり、これを活用した堆肥(ブランド名「牛若丸」)を作られています。
 学習会には、米の生産者を中心に三七名が参加されました。
 学習会では以下のような話しがありました。
・BMW技術は排水処理技術として誕生したこと、それが耕種農業に応用され全国に広まった。
・BMプラントの実際、飲水・尿処理・生物活性水のプラントの実例
・農業分野での活用〜畜産、耕種農業
・家庭での活用〜排水処理や生ゴミの発酵など
・南阿蘇村の生物活性水プラントと堆肥場の説明
・耕種農業での具体的な活用事例、土作りが大切であることと他の生産者での活用事例と具体的に希釈倍率や応用について

 参加者は、米の生産者が多かったのですが、大豆を自分で栽培して味噌作りをしている人や、ハーブの生産をしている人、また村内にある東海大学阿蘇校舎の大学生も参加していました。南阿蘇村農政課の工藤眞巳氏、有機肥料生産センターの宮田鉄雄氏をはじめセンターの関係者も参加いただきました。
 BMW技術について体系的に話を聞くのが始めての人が多く、質問も多く出されました。皆さんが有機肥料生産センターの堆肥を使っており、何人かは生物活性水を使っていますが、自分が実際に使っている堆肥や生物活性水がどのようなものかが納得できたようでした。またBMW技術について何らかの情報があった人でも「今までBMW技術協会は胡散臭いと思っていたが良く分かりました」という感想もあり、有意義な学習会でした。(報告:西日本BMW技術協会)

Author 事務局 : 2014年10月01日11:45

【AQUA270号】清村養豚場の新しい簡易尿処理プラント

 清村養豚場は熊本県のおよそ真ん中の御船町にあります。母豚は六〇頭ですので農場としては六五〇頭前後の規模です。BMW技術を使った簡易尿処理施設は二〇〇一年に作られ、一三年経ちますが、今回新たに個液分離の機器を設置、また七五トンの曝気槽を新たに設置し尿処理がスムースになるようにしました。
 五月の中旬にフル稼働に入り、六月には尿処理水の分析もされたということなので、今回訪問しました。
 また、当日はこの尿処理水を使っている熊本県愛農会野菜部の渡辺洋一さんもこられていましたので、野菜に使った様子などもお聞きしました。(以下、「清村」となっているのはお父さんの清村善一さん(六一歳)と息子さんの徹さん(三〇歳)に答えていただきました)

――以前に比べて、本当に臭いも改善しましたね。また処理水も良い色をしていますね。
清村:今年の二月に個液分離の機器を設置したのですが、その時点で状態がとても良くなりました。フル稼働してからは更に良くなりました。
――個液分離の機器と、曝気槽を設置したそうですね。
清村:一三年前にBMW技術で尿処理するために、以前からある六四トンの曝気槽(第一槽)に沈殿槽や自然石槽、精製槽などを追加していました。その時点では母豚五〇頭の予定でしたが、現在六〇頭になっていること、固形物(糞)も一部が流入していましたのでどうしても処理に無理があったようです。それで個液分離の機器と七五トンの曝気槽(第二槽)を追加して組み込みました。リアクター塔は新しい第二曝気槽に移設しました。
――曝気槽としては二倍以上になりますね。最初に水を張ってスタートしたのですか。
清村:匠集団そらの指導では、水を張って従来の曝気第一槽から順次流入させるということでした。でもせっかくなのでそれまでの最終槽(精製第三槽)から状態の良い時期を選びながら、三月の終わりごろから尿処理水を新しい曝気第二槽に流しました。およそ三分の一の二〇トンくらい入ったところで、曝気第一槽から流入するようにしました。
――今の状態はどうですか。
清村:とてもよくなっていますが、汚泥が増えすぎているので困っています。この汚泥は活性汚泥で、汚水を浄化するし、沈降性の優れた微生物の塊、フロックですので、ある程度は必要ですが、ポンプアップの際などに目詰まりするし、全体が重い感じがします。汚泥は三〇分後に三〇%の線に来るのが良く、六月頃はそんな状態だったのですが、現在は八〇%くらいになっています。
――汚泥が増えすぎていることへの対応・対策はどうするのですか。
清村:抜き取るしかないようです。抜き取った汚泥は畑の元肥に使ったり、堆肥の水分調整に使う予定です。
――処理水の検査・分析をされたそうですね。
清村:金属イオンなども分析したのですが、窒素分と電気伝導率はこのようになっています。

状態がすごく良いので、アンモニア性窒素がもう少し少なくなっていると思ったのですが、意外とあるなあという感じです。
――でも全窒素の中でアンモニア性窒素が四二%から一六%に落ちていますよ。それから電気伝導率ですが、尿処理の場合は生物活性水プラントでも五〜七程度ですから、七.六八ですので、立派なものです。
――ところで愛農会の渡辺さんが、耕種農家の都合で一度に大量に抜き取るということになっているようですが、大丈夫なのでしょうか。
清村:先日は三日間で一四トン持っていきました。でも最終槽(第三精製槽)は一六トンで流入が上からですので、全体の水位が下がりませんので大丈夫です。
――渡辺さん、プラントが新しくなって変わったことがありますか。
渡辺:自分はまだこれからですが、竹崎幸雄さんが八月のはじめにオクラが元気がなくなったので、原液を土中潅注と葉面散布したところ樹もとても元気になり、実にツヤが出てきたということです。だからとても楽しみにしています。
――清村さん、これからプラントの管理でこうしてみたいということがありますか。
清村:実は第一曝気槽から第二曝気槽に動かすのにタイマーセットしているのですが、二四時間で八回のセットしか出来ません。これをエアリフトポンプで常時移動するようにするとずいぶん状態が良くなるのではないかと考えています。
――まだまだこれからの楽しみがありますね。
清村:尿処理がうまく行くことにより、養豚をする楽しみも増えました。愛農会の生産者にも活用いただけるような尿処理水や堆肥作りにがんばります。地域のみんなと一緒に農業が出来ると良いと思っています。
――今日はどうもありがとうございました。
清村養豚場のプラント概要
※流入前に個液分離機(新設)
曝気第一槽(六四トン)
曝気第二槽(七五トン:新設)
沈殿槽四トン
沈殿槽上澄液貯留槽六トン
自然石槽四トン
第一精製槽一六トン
第二精製槽一六トン
第三精製槽一六トン
(取材:西日本BMW技術協会事務局長 宮﨑利明)

Author 事務局 : 2014年10月01日11:44

【AQUA270号】プラント巡回報告

プラント巡回報告 〜高知県大川村
 八月一八日に大川村を訪問、生物活性水プラントの稼働や、生物活性水の状態について確認をおこないました。大川村は、高知県の最北端に位置し、北は愛媛県に接し、急峻で平坦地が極めて少ない山村です。周囲は一〇〇〇m以上の山々に囲まれ、地域の中央底部を吉野川が流れ、早明浦(さめうら)ダムに続き、徳島県へとつながっています。
 現在、大川村では三人の若手を中心にBMW技術を実践しながら勉強しています。今回はその三人、大川村役場事業課主事の長瀬憲章さん、株式会社むらびと本舗の近藤篤さん、社団法人大川村ふるさとむら公社の谷真吾さんに話を聞きました。

―むらびと本舗と大川村ふるさと公社の役割を教えてください。
長瀬:「公社は村の産業振興を推進し、実行するところです。村内の観光施設「白滝の里」の運営を中心に、毎年一一月におこなわれる謝肉祭の実行委員会事務局など、色々なイベントをおこなっています。その他にも加工品の企画、販売などもおこなっています。むらびと本舗は、はちきん地鶏と大川黒牛を生産する組織です。現場は、鶏舎担当が一二名、牛舎担当は二名、今年は高知農業高校卒業の二名の新入社員が入り活気がでてきています。」

―はちきん地鶏の生産について教えてください。
近藤:「はちきん地鶏は、高知県の地鶏であるコーチン系の土佐九斤と大軍鶏をかけ合わせた「クキンシャモ」に、白色プリマスロックをかけ合わせて生まれたものです。導入当初の生産目標羽数は年間一〇万羽、現在は六万羽まできています。場内に孵卵場がありまして、卵から一貫生産です。九〇日で出荷となります。地鶏ならではの旨みのつまった味わいと歯ごたえ、それでも肉質は柔らかくて食べやすいです。これもBMW技術の導入があるからだと思っています。」
―どのような形態で販売をしていますか
近藤:「鶏肉は肉としての販売、他にもカレーやカレーうどんの素(スープ)なども作っていて、高知空港のお土産屋さんなどにも並んでいますが、高知の名産品になれるように頑張っています。」
―大川黒牛について教えてください
長瀬:「牛肉は繁殖・育成・肥育の一貫生産です。最近はお隣の土佐町、本山町の赤牛に押され気味ですが、年間で約四〇頭を出荷、毎年一一月には謝肉祭というイベントをおこない、ブランド牛として確立しています。」
―BMW技術の活用についてはどうですか
長瀬:「はちきん地鶏の農場と、大川牛の農場に、飲水改善プラントと生物活性水プラントがそれぞれ設置されています。」
近藤:「生物活性水の鶏舎での使い方は、飲水へ約二〇〇倍にして添加。堆肥づくりには、水分調整と消臭効果のための散布です。飲水は各鶏舎に設置してある飲水用のタンクがあるのですが、そこに飲水プラントから水が入ります。あとは毎朝手作業で汲んできた生物活性水を添加しています。鶏舎の洗浄や散布には使えていないのが課題です。」
谷:「私はここから離れた小南川という集落で、村内の農家が生産できるように実験と検証をしています。生物活性水のミニプラントがあり、飲水の添加などに使っています。」
長瀬:「堆肥センターでは、発酵槽への散布に日々利用しています。農場全体の臭いはほとんど治まってきています。堆肥は主に、鶏舎の床材にしています、あとは村内の農家が少しですが使っています。」
―BMW技術については?
長瀬:「鶏舎ですが、もう少し積極的にというか、たとえば洗浄や噴霧などに使っていきたいです。洗浄や鶏舎散布用に飲水改善プラントの水は使っているのですが、生物活性水の添加がうまくできていません。既存の施設を一部利用しているということもあり、レイアウト上、難しいものがあります。プラントのメインのパイプラインにどうやって添加していくか、今、匠集団そらと協会に相談しているところです。」
谷:「鶏自体の生体重などの比較実験をやっていますが、対象区とまだあまり差が出ていなくて。もっと徹底的に生物活性水を使えば、変わってくると思っているのですが。」
―今後について一言
長瀬:「堆肥の処理について、今は鶏糞を牛舎エリアにある堆肥センターまで、谷を降りて山を上がって運んでいます。そこで牛糞と混ぜて製造しています。もうそれだけで発酵槽の容量がいっぱいいっぱい。はちきんの年間生産目標一〇万羽を達した時にはパンクするのではと思っています。なので、鶏舎エリアに新たな設備をと考えています。頑張ります。」
近藤:「自分の後輩も入ってきたので頑張りたいと思います。」
谷:「もっとBMW技術を勉強して、理解を深めていきたいです。」
―九月には高知県内の学習会もありますので、取り組み発表もよろしくお願いします。ありがとうございました。
(報告:一般社団法人BMW技術協会 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年10月01日11:42

【AQUA270号】BMアジアから〜タイ訪問

 八月二二日〜二五日、タイを訪問しました。主な目的は、今年のアジアBMW技術交流会の招致ですが、協会会員のPTJ(パシフィック・トレード・ジャパン)、現地法人PPFC(パン・パシフィック・フーズ・コーポレーション)、そしてバンラート農協と、タイでの今後のBMW技術の展開について考えるということで、何軒かの農家を訪問し、生物活性水プラントの稼働状況確認や、バナナなど圃場を見せてもらいました。
 バンラート農協の生物活性水(実験)プラントは、二〇〇一年に設置されました。生物活性水を利用して、BM堆肥を製造し、バナナ栽培に活用、また養鶏や米栽培にも活用されるなど、BMW技術は広い範囲で浸透しはじめていきました。現在は、EM菌の台頭、目に見える成果がすぐにはでないことなど、様々な理由がありますが、BMW技術の普及について壁を乗り越えられずにいるのが現状です。今後はそれを打開するために現地の関係者の皆さんと考えていきたいと思います。

BM plant is not dead!
 それでも農協の職員でもある、農家のプラユーンさんの農場を訪問しました。ここでは農協所有の生物活性水プラントが稼働しています。原料は農協で製造された牛糞堆肥です。生物活性水と呼ぶには、もうひといきの出来ばえでしたが、すぐに改善できるものでした。プラユーンさんはブラマンという品種の肥育牛を九頭飼育しています。

プラユーンさんに聞きました。
―生物活性水はどのようにして使っていますか?
 「今は、牛の飲水に一〇倍希釈ぐらいで添加と、発酵飼料の製造に糖蜜などを使って作りますが、そこに混ぜています。」
―畜舎は臭いもほとんどなく、ハエがいませんが他の農家と比べてどうですか。
 「他の農家はよくわからないけど、うちでは臭わないし、ハエもほとんどいないね。生育も他とは比較していないけど、全体的にうちはまぁまぁの方だと思う。」
―牛について教えてください。
 「ブラマンという品種です。市場で一歳ぐらいの子牛を買ってきます。値段はその時々で交渉ですが、だいたい四三〇〇バーツ(約一四、〇〇〇円)。そして四ヶ月〜五ヶ月間、うちで肥育をかけてから出荷します。出荷先はベトナムで、毎回ベトナム人のバイヤーが直接買いに来ます。価格は目方で決まり、五〇〇キロならキロ当たり一〇五バーツ(約三四〇円)、六〇〇キロならキロ当たり一〇八バーツ(約三五〇円)と変動します。一頭あたり五万円〜六万円ぐらいになります。」
―発酵飼料の原料は?
 「とうもろこし、キャッサバ、大豆かす、パームカス、ココナッツのカス、米糠、パインの皮です。糖蜜と生物活性水を混ぜて発酵させて作っています。あとは干し草です。」
―干し草と発酵飼料、給餌の割合は?
 「きちんとは決まっていません。状態を見ながらあげています。あまり干し草を食べ過ぎると発酵飼料を食べない。発酵飼料を食べないと体重が乗らずにあまり儲からない。発酵飼料をあげすぎると餌代が高くつく。」
―微妙なバランスですね。ありがとうございました。

 その他にも、ヨーヨーさん、マーノップさんの農場も訪問し、バナナや花、茸の圃場やハウスを見学しました。今一度、BMW技術の基礎から一緒に学習し、利用方法を共有できれば可能性は広がるのではないかと思いました。バンラート農協のシリチャイ参事にお会いしたところ、BMW技術については堆肥作りなどが滞ってしまうなどしていますが、また続けていきたいので協力をお願いしますとお話しをいただきました。
(報告:一般社団法人BMW技術協会 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年10月01日11:41

【AQUA270号】ゲリラ豪雨、台風による記録的な大雨、土砂災害が発生

協会会員の広島自然学研究所、夢産地とさやま開発公社にも被害

緊急報告
 八月二〇日に広島県広島市で発生した豪雨、広島市北部の安佐北区や安佐南区の住宅街を中心に大規模な土砂災害が発生しました。二〇一四年八月二〇日午前三時二〇分から四〇分にかけて、局地的な短時間大雨によって住宅地後背の山が崩れ、同時多発的に大規模な土石流が発生しました。近くを流れる根谷川が氾濫し、多くが就寝していた時間帯にあったため、二歳の男児から八〇代の女性までを含む死者・行方不明者計八〇名以上に及ぶ人命被害など広範な被害をもたらしました。広島市災害対策本部のまとめでは、八月二二日時点で少なくとも土砂崩れ一七〇か所、道路や橋梁への被害二九〇か所が確認され、国土地理院が航空写真を解析した結果、安佐南区から安佐北区にかけて約五〇か所で土砂流出が発生しているものとみられています。

 八月二〇日、土石流で甚大な被害が出た広島市安佐北区可部町にある、広島自然学研究所、旭鳳酒造を訪問しました。旭鳳酒造の店舗から、三百メーターほど先の川沿いの道路が崩落して、川から泥水が道路一杯に流れて来て、店の中が一〇cmほど浸水した、とのこと。幸い酒蔵や加工場までは浸水せず、水も引いて店内の清掃も終わっていました。
 翌朝から店先の道路に溜まっている土砂を取り除く作業の手伝いをしました。作業中に、道路復旧の土嚢を積んだダンプがひっきりなしに店の前を行き来し、消防のヘリが低空飛行で飛び回るなど、人命救助と復旧作業、二次災害の防止、騒然とした中でその被害の大きさを感じました。
  (報告:匠集団そら 星加浩二)

 一方、高知県や徳島県では、八月上旬からの台風一一号と一二号の影響で、四国を中心に記録的な大雨が降り続き、高知市は市内全域の一六万二〇八八世帯、およそ三三万七〇〇〇人余りに対し土砂災害の危険性が高まっているとして避難勧告を出した。また、高知県内のBMの拠点である夢産地とさやま開発公社がある、高知市土佐山を源流に市内へ流れる鏡川が増水し氾濫寸前、北部の大川村の東側、吉野川源流本山町付近では 一 時間におよそ一二〇mmの猛烈な雨を記録したという。農業被害は三三市町村で一五億八千万円に上り、過去五年の台風、大雨被害で最大となった。ハウス倒壊・破損は三三六棟。四万十町でショウガの茎が強風や水流で折れ、約三億円の被害が出ているとのこと。山腹が崩壊した高知市土佐山では、あちらこちらの山腹が崩れ、道路に亀裂が入るなど、現在も復旧作業に追われている。(朝日新聞より一部抜粋)

 八月一八日、台風による豪雨で被害を受けた高知市土佐山を訪問しました。当日の午前中は北部の大川村を訪問したので、県中央部の工石山を越えて土佐山に入る予定でしたが、県道が通行止めのため大きく迂回して、通常の倍以上の時間をかけての到着でした。地域内に入るとまず驚いたのは、あちらこちらで山崩れがおこっていて、土砂が道路を塞ぐ状態になっていました。生物活性水プラントと堆肥製造施設がある「土づくりセンター」に行く道は、いつ崩れてもいいような状況で危険を感じました。もう一回同じ雨が来たらと想像するだけで身が震えます。とさやま開発公社理事の大﨑裕一さんは「村内の道はほとんどが危険な状態、雨が収まった後も、毎日のようにどこかで崩れたり、道に亀裂が入ったりしている。一番大きく崩れているところは、集荷所の真上で土砂が止まっている状態、もう一回来たら終わりかもしれない。圃場は全部ではないが、生姜の茎が折れてしまった。生姜自体には大きく影響がないと祈りたいところだが、掘ってみないとわからない。」
 若いスタッフは不安もあると思います、疲労困憊の様子でした。大﨑さんにお身体に気をつけて頑張って下さいと声をかけると、「これが自然の中に住んでいるということ」という言葉が返って来ました。そこには、厳しい自然環境の中で生きてきた強さと重みを感じ、逆に奮い立たせてもらった気がしました。土佐山の皆さん、頑張って下さい。
(報告:一般社団法人BMW技術協会 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年10月01日11:38

 
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